ものづくりはおもてなし「エンジニアの仮説思考というこころがけ」
Imagination is INNOVATION!
ものづくり、研究開発の成果を最大限発揮するためにも、「仮説思考」という「こころがけ」をしっかりできるエンジニアとして脳内アスリートのトップを目指そう。
できるエンジニアのこころがけ「仮説思考」の5ステップ
1.「目的」(問題や必要な結果)をおさえられていない事を理解する
- 目的達成精度への貪欲さ
- 必ず環境や他者からニーズ、リクエストのあるものは、自分自身がおさえた目的(問題や必要な結果)として常に100% 出し切れていないと貪欲に思うこと。
- 人とのコミュニケーション(伝えられた事)には必ずギャップがあり100%にはなり得ない事を心に刻み、これからこの問題に対して向き合う情熱をもったこころを準備すること。
2.「情報収集」(他者の思考を観察)する
- 未来志向になる
- 普段の生活の中で「1年後どうなっているか」「5年後はどうか」と常に意識を未来に向けて生活してみることも、仮説思考を鍛えるのに役立つ。例えば、買い物の際に「将来この商品は残るのか、それとももっと便利な商品に代わるのか」「今こういった服が流行っているけれども、いつまで流行るか」などと、時間軸や機能軸、人の感受性に対しても観察力や疑問を持って考えてみるとよい。世の中は様々な情報であふれており、日頃から様々なことに好奇心を持って情報収集し、自分なりの仮説を立てる習慣をつけてみる必要がある。
- 起きる事象に対して、人よりも貪欲に観察力をもって確認し、自ら身の回りの出来事を数多く吸い上げる事が必要である。
- 失敗を沢山して、数多く覚え、選択肢を増やし、この後に必要となる分析・応用できる判断力まで高めることを日々楽しむことが必要である。
3.目的に対する「仮説思考」をたてる(意思決定のための思考)
- 論理的思考を鍛える
- 論理的思考力とは、物事を体系的に整理し、矛盾や飛躍のない筋道を立てる思考で、仮説思考を支える、最も重要な思考である。
- とにかく沢山の想像し必ず1つ1つの事に「So What?(だから何なの?)」と自らの仮説に問いかけることが重要である。
- 「失敗の仮説」はエンジニアにとって非常に重要なエッセンスとなる。これにはエンジニアとして過去にいかに沢山のトライと失敗できているかも含まれる。
4.「おもてなし」という行動をする(バトンを落とさない工夫)
- 作業でなくこころがけ
- バトンタッチされた元の相手、した先の相手になりきり「こころがけ」をもって行動する。(造る)
- ものづくりには、創り上げるまでに携わる全ての人々へ「おもてなし」なこころをもち、自分自身への仮説思考へのモチベーション・求心力をもつことが非常に大切である。
- 「サービス品質をかぶらせよう」とよく言う部分としては、相手と自分との間に溝ができない様な、バトンの渡し方を必ずしようという意味である。
こころがけ |
「心がけ」は、ある目的に対するものというより、どんな事態にもいつでも対応できるような心の準備をいう。 「心構え」は、ある目的に向けての心の準備。 「気構え」は、ある目的を必ず達するという意気ごみを含んだ心の準備。 |
おもてなし |
「おもてなし」の語源は、とりなし、つくろい、たしなみ、ふるまい、挙動、態度、待遇 馳走、饗応。平安、室町時代に発祥した茶の湯から始まったと言われ、客や大切な人への気遣いや心配りをする心。「おもてなし」は、「もてなし」に丁寧語「お」を付けた言葉であり、その語源は「モノを持って成し遂げる」という意味。また、「おもてなし」のもう一つの語源は「表裏なし」、つまり、表裏のない「心」でお客様をお迎えすることでもある。心を配る、五感と心に感動を与える。 |
5.情報共有、必ずコミュニケーション(他者の状況を把握する)
- 因果関係を正しく捉える
- 因果関係とは、原因と結果の関係のことで、議論中によくやってしまうのが「論理の飛躍」で何を根拠に主張しているのか、そのつながりがよく見えないことがある。例えば「将来AIに仕事を取って代わられるのではないか」という議論に対して、本当にそうなのか、漠然とした不安を「よく知らない」ことが助長させていることは否めない。違和感を感じる議論は、そのままうのみにせず、その議論には「何の裏付けがあるのか」「どういう根拠があるのか」を調べ分析する習慣を付ける必要がある。
仮説思考(こころがけ)の重要性
作業スピードと質があがる
試行錯誤をする時間を効率よく使い、スピード感をもった精度の高い仕事ができる様になる。
仮説をもたずに仕事をすることで、誰にも見えない試行錯誤の時間が増え、なおかつアウトプットしたものが目的とギャップのあるものとなれば、手戻りや作り直しの時間が必要となる。かぎられた時間のなかで結果を出すことが求められる「ものづくり」「エンジニア」は仮説思考が大変重要な要素となる。
未来のエンジニアたちに言えること
仮説思考は、今後クライアント企業の問題解決、必要とされる「ものづくり」を生み出すまでにますます重要になる。これまでは現場での過去の成功パターンや失敗例である程度の「ものづくり」や数字の結果がでる時代だったものが、新時代としてシミュレーションやデジタルツインといった未来に目を向け仮説を持ちながら主体的に動き、スピーディーに意思決定できる企業やエンジニアが、ビジネスにおいて今後は生き残っていくと考えられる。
これからの時代は、非連続的で、過去の経験、昔からのルールやマニュアルが通じない状況が多くなり、「変動」が大きく、「不確実」で「複雑」、「曖昧」なことを形にしていくことこそがエンジニアに求められる。
VUCA(変動・不確実・複雑・曖昧)
変動 | Volatility |
不確実 | Uncertainty |
複雑 | Complexity |
曖昧 | Ambiguity |
このVUCAへの対処は、よく言われるPDCAでは対処できない。VUCAへの対処方法として使われるフレームワークはOODAループとなる。
- PDCAは人間の行動によって全てがコントロール可能であると感じるようになった産業革命以降に広まった視点で、自分が何をやるか計画し、それを実行し、自分を評価して改善するという自分中心の視点となる。
- OODAは、自分にはコントロールできないことに対していかに自分を戦略的に結果を出せるかという視点となる。
OODA(観察・状況把握・意思決定・行動)
観察 | Observe |
状況把握 | Orient |
意思決定 | Decide |
行動 | Act |
- 観察(Observe)がPDCAと最も違う点で、未知の状況に対して、起きていることを把握することが最重要になる。研究開発、ものづくりではこれが最も重要な要素となる。
- 状況把握(Orient)は、観察によって得られた情報から状況全体を推定し、詳細を推定する。不足している情報に対しても可能な限り客観的なスタンスで扱う事が必要である。観察の後に状況把握の様に考えてしまいがちだが、むしろ仮説による状況把握によって観察視点を持つことの方が自然な流れといえる。
- 意思決定(Decide)は、把握した状況に対して、これから実行する事を決定する。外部状況に対して自分自身がどうすることが良いのかを思慮する。客観的な情報に基づいて意思決定していることも必要だが、行動をおこしながら観察を進める事がこのOODAの特徴だ。
- 行動(Act)は、決定したことを行動に移し始めると同時に状況は変化していき、より複雑になると同時に、新しい情報が得られますので、観察と状況把握を同時にアップデートしていく必要がある。混沌とした状況とはその前にパターン化した活動が前提としてあり、それが大きく外れたときに生まれる状況にある。人はこれまでと同じ行動を無意識にとってしまいがちだがその行動によって失敗、間違いを冒し状況を知ることが多くある。
意思決定は仮説思考の活動
「観察」と「状況把握」は「他者への視点」、「意思決定」と「行動」は「自己への視点」となる。
「観察」と「行動」は「身体活動」で、「状況把握」と「意思決定」は「思考活動」となる。
この他者視点(外)・自己視点(内)と思考活動・実行活動をバランス良く持つことが重要となり、エンジニアとして仮説思考を同時に意識することが非常に大切である。
自分中心視点から、全体視点へ意識を切り替え、ものづくりや研究開発を行うことが重要となる。
考察と思い
経営の基本として、計画中長期計画に基づき毎年、年度前におこなわれ、それを元に行動する以上、研究開発の革新やものづくりへの投資は一定以上のスピードで変化することは難しい事実がある。それと同時に戦後産業革命を源流に持つ製造業・メーカは、今まで計画と実績といった状況把握と意思決定のPDCAをしっかりまわしてきた。
日本の大企業の経営の根幹でもあるPDCAサイクルで、今後も同様なスタイルで精度の高い、じっくりとした「ものづくり・研究開発」を推し進めることだけでは、時代にそぐわず、様々な無駄と歪みが発生し利益を生み出す効率が低くなっていることも否めないのではないだろうか。さらに悪いことに無駄と歪みによって生み出された仕事をやってしまい、成果「改善」となったいう名の悪循環がむしろ評価されお金になるというスパイラルも産まれ、本質的なものづくりや開発ができないという状況もあるのではなかろうか。本質を得ない残念な話である。
トライをし続け足回りの早いスタートアップや中小企業から、大きな分母と取り組みをこなせる大企業が一体となって、本質的なものづくりや開発は、他者としっかり意思疎通しながら、スピーディーに「仮説思考」しつつ連携する事こそが、オープンイノベーションとして最大限に技術改革できる効果ではないかと考える。
思考は現実化する!
イマジネーションはイノベーションだ!
Imagination is innovation!
仮説思考を鍛えるための技法
①発散技法・・・発散思考を用いて、事実やアイデアを出すための思考法
1)自由連想法 (ブレインストーミング・ブレインライティング・マインドマップ)
2)強制連想法 (チェックリスト法・形態分析法・マトリックス法)
3)類比発想法 (ゴードン法・シネクティクス法・NM法)
②収束技法・・・発散思考で出した事実やアイデアを、評価したりまとめあげる技法
1)空間型法 (KJ法・ブロック法・クロス法)
2)系列型法 (PERT法・ストーリー法・特性要因図法)
3)評価法 (一対比較法·持ち点評価法)
③統合技法・・・発散と収束を繰り返すところに特徴を持つ技法
1)ハイブリッジ法
2)ワークデザイン法
3)TRIZ法・デザイン思考)
④態度技法・・・問題解決を進めるための、創造的態度を身につける技法
1)瞑想型法 (メディテーション法・自律訓練法・禅・ヨガ)
2)交流型法 (TA法一交流分析・エカウンターグループ)
3)演劇型法 (心理劇・ロールプレイ・クリエイティブドラマティクス)
⑤実現技法・・・創造の実現に向けて、活用する技法
1)ディベート技法
2)企画書作成法
3)プレゼンテーション技法