核スピン
nuclear spin
原子核が持つ量子力学的な角運動量のこと。原子核を構成する陽子と中性子の持つスピン角運動量と、それらが原子核内部で運動することに対応する角運動量とを合成した角運動量になる。電子などが磁気モーメントを持つのと同様に、原子核も核スピンに対応した磁気モーメントを持つ。核スピンも離散的な値しかとらず、それを表す量子数を慣例的に変数 I で表す。陽子も中性子もスピンが1/2であり、1個の原子核内では陽子同士、中性子同士はスピンが互いに反並行となっている2個が組になっている方が安定なので、それぞれ偶数個の合成スピンは0となる。このため、原子番号と質量数が共に偶数の原子核の核スピンは0となるが、一方だけが奇数の原子核の核スピンは半整数、両方とも奇数の原子核の核スピンは整数となる。水素原子の原子核は陽子そのものなので、その核スピンは1/2である。核スピンが同一原子内の電子の電場や磁場と相互作用することで、それがない場合に対してエネルギー準位のずれが生じることが超微細構造を生じる原因である。